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うぶけや

刃物の歴史に日本橋文化を垣間見る

天明3年(1783年)創業の「うぶけや」。屋号は、“赤ちゃんの産毛も剃れる、切れる、抜ける刃物”が由来だとか。

木造三階建ての趣ある店舗は、昭和2年に建てられたもので、店内の総桑でつくられた大きな陳列棚や、唐傘天井が見事だ。昭和50年頃に改装した際には、これらのしつらいを保管しておき、完成後にそっくりそのまま移設したのだという。

代表的な品は包丁、鋏、毛抜き。種類が豊富で、用途や好みに合わせて選ぶことができる。日本橋を舞台にした小説「新参者」(東野圭吾著)に登場した『食用鋏』も人気の品だ。「もともとこの辺りは花柳界で賑わっていたんです。芸者衆がお客さまのために、食べにくい食材を小さく切るのに使ったのが始まり。“懐中鋏”とも呼ばれていました。いまは介護や離乳食にお使いになる方が多いですね」と八代目当主の矢﨑豊さん。日本橋らしいエピソードが詰まった鋏といえる。

店の奥にある工房では「うぶけや」の製品のみならず、他店の刃物の研ぎ直しも引き受けている。刃物はきちんと手入れをすれば長年愛用できる。日常的に使う道具だからこそ、一度手にとれば使い心地の良さを誰もが実感できるはず。使うたびに喜びが味わえる、一生ものの品をぜひを手に入れたい。

店舗情報

店名うぶけや
住所東京都中央区日本橋人形町3-9-2
TEL03-3661-4851
Webサイトhttps://www.ubukeya.com/

※情報・価格等すべて取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。

日本橋ごよみ2013年02月【第28号】