粋な芸人たちを魅了した手焼きの味
昔ながらの製法と味を守り続ける「にんぎょう町 草加屋」。埼玉県の草加で煎餅づくりを手がけていた先代の石川とくさんが、昭和3年(1928年)にこの地に店を構えたのが始まりだ。
店内ではご主人の石川順道さんが、一日に400枚ほどの煎餅を焼いている。「草加煎餅で大事なのはうるち米をせいろで蒸すことと、焼く際に備長炭を使うこと。蒸すことでコシのある美味しい生地が出来上がり、備長炭の遠赤外線が米のうま味と甘みを引き出してくれるんです」。

生地は草加の工場でお兄さまがつくっているそう。200℃以上の高温になると米のうま味が損なわれてしまうため、一気に火を通すのではなく、じっくりと焼いていく。焼き上がったらすぐにジュッと醤油を絡ませる。「熱いうちでないと中まで味が染みないんですよ」。
店内で焼かれたこの『手焼き煎餅』は、数ある商品の中でもいちばん人気。かつて人形町に寄席の末広亭があったことから、噺家の三代目・桂三木助氏もこの品をこよなく愛したという。パリッとした歯ごたえの生地に醤油ダレが染み込み、何とも深い味わいだ。そのほか17代目・中村勘三郎氏の注文でつくり始めた『おこげ』も人気。名人たちに愛された風味豊かな煎餅を、ぜひお試しあれ。
ギャラリー

下/海老の風味が楽しめる『海老せん』は可愛らしい桜のかたち。これからの季節の手土産やお茶うけにぴったり。250円(100g)。


下/店内で焼かれた煎餅のほか、草加の工場でつくられたもの、厳選した品など60種類以上が並ぶ。
店舗情報
店名 | にんぎょう町 草加屋 |
住所 | 東京都中央区日本橋人形町2-20-5 |
TEL | 03-3666-7378 |
※情報・価格等すべて取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。
日本橋ごよみ2013年03月【第29号】