株式会社たいめいけん 専務取締役 茂出木 浩司 氏

2011年06月号【第8号】

江戸の街・日本橋で洋食文化を築き発信し続ける

三代目として伝統を受け継ぎながらも、テイクアウト惣菜店「デリカテッセン・ヒロ」や「洋食や三代目たいめいけん」のプロデュース、またテレビや雑誌などの料理企画なども手掛ける茂出木浩司氏。多岐にわたり活躍する茂出木浩司氏が、たいめいけんの洋食について、日本橋との関わりを語る。


洋食は『日本の家庭の味』 だから毎日食べても飽きない

 お昼どきは、近くのビジネスマンやOLがズラリと列をなす「たいめいけん」。気軽な洋食を愉しめる1階フロアでは、オープンキッチンでテキパキと料理を仕上げるシェフ、賑わう客席を縫ってリズミカルに給仕するサービススタッフ、出てきた料理を美味しそうに頬張る人々、そんな光景が日々繰り返されている。
 「洋食は『日本の家庭の味』であり『おふくろの味』なんですよね。毎日食べても飽きない、日本人の主食であるお米にあう、それがたいめいけんの洋食です」と三代目・茂出木浩司氏。
 昭和6年(1931年)、「日本人のための洋食を」と初代・茂出木心護氏が創業。当初から今とさほど変わらないメニューを提供、エビフライやメンチカツなどの揚げものは、当時からも人気メニューだったそう。そんな初代の味を、二代目・茂出木雅章氏や三代目・茂出木浩司氏が受け継ぎ、工夫を重ねて発展させてきた。

茂出木浩司氏 1967年生まれ。都立駒場高校卒業後、渡米。その後、数店のレストラン修業を経て、たいめいけん三代目に。「洋食や たいめいけん」(調理栄養教育公社刊)、「茂出木雅章・茂出木浩司シェフたいめいけんの洋食」(世界文化社刊)などの著書がある。
 

驚かせ奇をてらうのでなく 寛ぎ愉しめる味やサービスを

 美食家として知られる作家・池波正太郎氏をはじめ、多くの著名人たちからも愛され続けてきた「たいめいけん」。
 「洋食は、普遍的な料理ですし、メニューだけでも安心してオーダーができるわかりやすい料理です。またご家庭でも作ることができる。そんな身近な料理だからこそ、素材にこだわり丁寧に作ってきた同店の味が、多くのお客様にご支持いただいていることは本当に嬉しい」と話す。
 「持論ですが、と前置きした上で「料理は驚かせたり、奇をてらったりするものではなくて、きれいなお料理だなとか美味しそうな盛り付けだなって言いながらリラックスして楽しむものだと思うんです。たいめいけんでは、そんな風に寛いだ気分で召し上がっていただける料理やサービスを提供していきたい」と茂出木氏。

ハムライスが包みこまれたふんわり卵のオムライス。フワッとした卵の食感とハムライスの香ばしさが食欲をそそる。

新たな挑戦ができるのも たいめいけんがあるから

 伝統を受け継ぐだけではなく新たな挑戦にも意欲的だ。日本橋三越本店に「デリカテッセン・ヒロ」というテイクアウト惣菜店を出店して早10年、ファンも増え続けている。
 最近では、JR上野駅や立川駅に「洋食や三代目たいめいけん」という新業態店舗もプロデュース。話題のエキナカ店として評判は上々だ。次は「カウンター鉄板の洋食屋をやりたいんですよね。結構、細かい部分までイメージできていますよ」と笑う。
 物の売れない時代、人気店の三代目にはさまざまな企業が相談に訪れる。「メーカーとの共同開発商品、コンビニエンスストアとのお弁当開発など、色々な企画が進行中です」と茂出木氏。
 人当たりの良さもあってテレビや雑誌からの依頼も引きも切らず。「本当にありがたいですね。でもそれもお店あってのこと、だから一番大事にしているのは、お店なんですよ」と言い切る。

厨房に入ると表情も変わる。数えきれない程、作り上げているオムライスにも真剣に対峙する。

魅力的な日本橋にするため料理人仲間と知恵を絞る

 架橋100周年を迎えた日本橋、橋のたもとにある店としても「街を盛り上げることには、積極的に協力させていただいています。東日本大震災で架橋100周年イベントは延期になりましたが、また秋に面白い企画が一緒にできればいいなと思っています」と茂出木氏。
 生まれ育った場所として、日本橋には思い入れも強い。近隣の料理人たちと集まると「他のエリアに負けないように、魅力的な街にするためには、という答えがなかなか出ない」議論になることも多いとか。
 日本橋の好きな場所について尋ねると「店のあるこのあたりですね。昔は、今の野村證券のあたりにあったんですよ、だからあのあたりから店の場所までは、自分の居場所という気がするんです(笑)。橋を渡ってしまうと、雰囲気が違うんですよね」と笑った。

DATA

たいめいけん
東京都中央区日本橋1-12-10
☎ 03-3271-2465
www.taimeiken.co.jp