明治45年(1912年)創業の「小春軒」。山県有朋のお抱え料理人だった小島種三郎さんが、同家の女中頭だった春さんと結婚し、二人の名前を店名にして開いた店だ。数ある人気メニューの中から、初代が考案した『カツ丼』をご紹介。
今年3月、創業100周年を迎えた人形町の洋食屋「小春軒」。毎日、近隣で働く人々や、遠くから足を運ぶ“洋食好き”で賑わう。揚げ物を三代目の小島幹男さんが、焼き物を四代目の祐二さんが担当し、フロアを三代目の奥さまが担当している。
17年前、祐二さんが修業先から戻ったのを機に、「初代の味を復活させよう」と始めたのが、この『カツ丼』だ。一度メニューからなくなっていたため、幹男さんが子どもの頃に食べた味を頼りに再現した。「当時、カツ丼はご馳走。お客さまと同じカツ丼を食べさせてもらったのは、初代にとって初孫の父のみだったそうです」と祐二さん。明治時代のカツ丼の“特別感”を伝える、貴重なエピソードだ。
この店のカツ丼は、ご覧のとおり卵でとじていない。一口カツ、目玉焼き、野菜で構成されている。三代目がカツを揚げている間に、四代目が生の玉ねぎ、下ゆでしたジャガイモと人参、グリンピースを割り下で煮る。そこに揚げたてのカツを浸して、ご飯の上へ。さらに焼きたての目玉焼き、野菜を重ねて完成だ。親子の連携プレーがなせる技。「喧嘩した時でも、コンビネーションだけはバッチリなんです(笑)」。味の決め手は、割り下に隠し味としてデミグラスを加えること。これにより、香りとコクがプラスされるという。
“気どらず美味しく”がモットーの小春軒。食べたそばから「次はいつ食べよう?」と恋しくなるカツ丼は、家族の歴史の味なのだ。
店名 | 小春軒 |
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住所 | 東京都中央区日本橋人形町1-7-9 |
☎ | 03-3661-8830 |
営業時間 | 月~土11:00~14:00、月~金17:00~20:00 日曜・祝日休 |