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室町砂場

老舗の蕎麦屋で過ごす 粋なひととき

暖簾をくぐり、店内に足を踏み入れると、「いらっしゃ~い」という元気な花番さんたちの声が笑顔とともに出迎えてくれる。初めての人でも、行きつけの店に来たような気分になれる、それが「室町砂場」だ。

明治2年(1869年)の創業時より、提供している蕎麦は2種類。蕎麦の実の芯だけを挽いたさらしな粉の“ざる”と、内層・中層・外層のうち内層だけを使った一番粉の“もり”。前者は絹のように喉越しがよく、後者はほとんど雑味のない洗練された蕎麦の風味が愉しめる。

お品書きは昼も夜も変わらないので、店内では明るいうちから蕎麦をつまみに軽く一杯、なんて姿も見かける。女将の村松洋子さん曰く、「昔は決まった方が多かったのですが、いまでは、若い女性が一人でいらして一杯飲んで行かれることも増えました」とのこと。

女性一人でも気軽に利用できるのは、女将さんをはじめ、店で働く人たちの気配りが隅々まで行き届いているからだろう。いつでも、すぐ声の届く場所にいてくれる。そのさりげない“おもてなし”は、忙しいランチタイムでも変わらない。

平日はもちろん、オフの日には江戸っ子のようにお酒と一緒に楽しむのもいい。江戸の伝統的な蕎麦「おかめそば」なら、彩り豊かなおかめの顔(具)をつまみに、蕎麦も味わえておすすめ。さらに蕎麦湯で、江戸前のやや濃口なつゆの変化も堪能できる。

また、3年前に改装したという2階席は、事前予約が必要だが、贅沢な純和風の個室になっているので、ぜひ気のおけない友人や同僚、家族などを誘って利用したい。

店舗情報

店名室町砂場
住所東京都中央区日本橋室町4-1-13
TEL03-3241-4038
Webサイトhttps://www.muromachi-sunaba.co.jp/nihonbashi/

日本橋ごよみ2012年05月【第19号】