浴衣スタイルを一新させた先駆者 竺仙(ちくせん)

2011年08月【第10号】
  • 着物と同様、浴衣も年齢だけではなくスタイルや雰囲気にあわせて選びたい。右から「白地のゆかた 流水牡丹柄」一反22,050円、「縮長板(ちじみながいた)秋草の柄」一反69,300円、「絹紅梅小紋(きぬこうばいこもん)麻の葉柄」一反76,650円

  • 多彩な柄の手拭も人気。吉原の茶屋で暖簾に使われていたことから名前がついた「吉原つなぎ」1,050円、グラデーションの染めが美しい「麻の葉」1,365円

 江戸小紋や浴衣を扱う「竺仙」は、天保13年(1842年)の創業だ。俳句を嗜んだ趣味人の初代・仙之助は、文人墨客たちと交流するなかで、彼らや歌舞伎役者に着せる型染の衣装を考案する。役者たちが着こなすシンプルで粋な小紋柄の浴衣は、またたく間に江戸っ子の話題を集め、人々は竺仙の浴衣を買い求めたという。

 武家の裃(かみしも)に描いた模様が発祥とされる小紋。そんなフォーマルで上品な柄に加えて、庶民が好む花や野菜、虫や鳥などの身近なものも柄に取り入れた竺仙。そうしたアイデアや染め技法は、浴衣スタイルを一新させる。

 もともと湯浴み着の浴衣、それゆえ無地が主流だったが、多彩な小紋柄を染め抜いたことで洒落た外出着へと変貌を遂げた。竺仙が手掛けた新たな浴衣スタイルは、江戸はもちろん、京や大坂にも広がっていく。

 毎年1,000種類もの新作を発表する竺仙。歴史ある柄に時代の意匠を交錯させて、新たな浴衣を生みだし続けている。江戸の夏と同じく今年も、新作を着こなした浴衣美人が街を涼しげに彩っているはずだ。

DATA
店名 竺仙(ちくせん)
住所 東京都中央区日本橋小舟町2-3
03-5202-0991
営業時間 9:00~17:00 土・日曜、祝日休(4月~7月は土曜も営業)
URL http://www.chikusen.co.jp

※情報・価格等すべて取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。