お客さまの声から生まれた杏あんみつ 甘味処 初音

2013年07月【第33号】
  • 上/『杏あんみつ』(950円)。とろりとしたこし餡と柔らかな杏、ほどよい固さの寒天が一体となって、スプーンで口に運ぶたび、至福のひととき。蜜は白蜜と黒蜜から選べる。
    下/夏はかき氷も人気。写真は天然氷を使用したかき氷に抹茶シロップと小倉あんがのった『氷宇治あづき』(850円)。氷の冷たさで固くならないよう、白玉は別皿で添えられる。

  • 上/昭和38年、地下鉄日比谷線が開通した年に建てられた現在の店舗。入口ではあんみつやくず餅、おしるこなどのお土産を購入することもできる。
    下/落ち着いた雰囲気の店内。いたるところに鼓をモチーフにした意匠がほどこされている。お茶にも手を抜かないのが信条。茶釜で沸かしたお湯で淹れられた煎茶は、まろやかで優しい味。

暮らしの道具や食から、新しい名物まで。ぜひ手にしてほしい、味わってほしい日本橋の逸品をご紹介する「日本橋逸品図鑑」。今月は男女ともにファンの多い「甘味処 初音」。

 人形町通りに面した初音は、天保8年(1837年)創業の甘味処。店名は、初代が歌舞伎の義経千本桜に登場する「初音の鼓」にちなんでつけたのだという。昭和の香りが残る店内には、女性客のみならず、男性の一人客も目立つ。「みなさんそれぞれお好みが違うでしょ。お客さまのご要望をうかがっているうちに、どんどんメニューが増えていったんです」と七代目の女将・石山洋子さんは笑う。

 『杏あんみつ』もその一つで、40年ほど前、妊婦のお客さまの「甘酸っぱいフルーツが食べたい」という希望を叶えるために生まれたのだとか。「一度召し上がるとやみつきになる方が多いみたいですよ」。杏は、カリフォルニア産のセミドライフルーツをシロップで煮込んでいる。北海道産の小豆を使った餡と沖縄諸島の黒糖からなる黒蜜は手づくり、寒天は小笠原諸島の天草を使用している。小さなガラス器の中で、手間のかかった素材たちが繊細かつ完璧なハーモニーを奏でている一品だ。

 地下は仕込み場になっており、毎日、石臼で餅をついたり二種類の餡をつくったり、豆かん用の豆を煮たりと忙しい。「親子4代で通ってくださる方もいらっしゃる。いつも同じ味をお出しすること、それがいちばん大事だと思っているんです」。

DATA
店名 甘味処 初音
住所 東京都中央区日本橋人形町1-15-6
03-3666-3082
営業時間 11:00~20:00(L.O.19:30)、 日曜・祝日11:00~18:00(L.O.17:30)  無休

※情報・価格等すべて取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。