素材の味と風味をいかした上質な和菓子 長門

2012年09月【第23号】
  • 店の歴史を物語る、葵の紋が刻まれた包装紙。竹の皮に包まれた『久寿もち』(850円)は、はかないほど柔らかい。香り豊かなきな粉がたっぷりと添えられている。

  • 見目麗しい上生菓子たち。右上からきんとん餡の『萩の戸』、練切りの『桔梗』、中秋の名月をモチーフにした『むさし野』は、求肥と餡、卵の黄身のお菓子。いずれも320円。

  • 上/ガラスケースの中には、上生菓子や半生菓子、最中などが美しく並ぶ。訪れる度に少しずつ季節のお菓子が変わっているのも、この店の魅力。
    下/丸善の横道にある店舗。東京駅からもほど近く、お土産を求めて立ち寄る人も多い。お菓子はすべて保存料を使用していないので、日持ちはお店でご確認を。

 享保年間(1716~1735年)創業の和菓子店・長門(ながと)。江戸時代、徳川家に菓子を献上していた老舗だ。どのお菓子も店の2階で、熟練の職人によってつくられている。

 特に人気なのは『久寿もち』。ほのかな甘さ、ふるふると柔らかな食感の餅と、風味豊かなきな粉の組み合わせが絶妙だ。関東でくず餅といえば、通常は小麦澱粉を発酵させ蒸したものをいうが、この店ではわらび粉を用いている。

 「昭和初期に先代が始めました。当時、わらび粉は関西で使われるもので、関東では馴染みがなかったんです。そこで、親しみやすいように関東風くず餅と同じ形の三角形にし、この名をつけたと聞いています」と話すのは、十四代目の菱田敬樹さん。わらび粉と砂糖を、透明になるまで丁寧に練り上げていく。きな粉は深入りの黒須きな粉を多めに配合しており、黄色味が深い。

 このほか、約2週間ごとに種類が変わる季節の上生菓子もおすすめだ。先代から引き継いだ形に加え、古典文学や時代小説、四季の草花などからモチーフを選んで新しいお菓子もつくる。「かしこまらず、気軽に召し上がってください」と菱田さん。日本茶はもちろんのこと、さまざまな飲み物と合わせて楽しみたい。

DATA
店名 長門(ながと)
住所 東京都中央区日本橋3-1-3
03-3271-8966
営業時間 10:00~18:00 日曜・祝日休
URL http://nagato.ne.jp/

※情報・価格等すべて取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。