大切に受け継がれてきた手焼きの風味 人形焼本舗 板倉屋

2012年01月【第15号】
  • 焼きたてから時間の経過とともに味の変化が楽しめる人形焼。朝5時から夕方4 時まで、毎日およそ2000個を焼き上げる。前日から仕込む生地は気温や湿度の影響を受けやすいため、天候を予測しながら、水分を調整するという。1個100円、各種詰め合わせもあり。

  • 左/化粧箱入りの人形焼は、年末年始のご進物、東京土産にぴったり。10個入り1,100円
    右/上の焼き型は発売当初使っていた全身像の型。現在、使用している型(下)は大阪の型職人の手によるもの。鉄と真鍮でつくられている。「昔のものより彫りが深くて、餡がたっぷり入るんですよ」。

  • 大学卒業後にこの道に入り、今年で7年目という四代目・藤井雄太さん。父である三代目と弟さん、お弟子さんとともに店を盛り上げている。

  • 甘い香りが漂う人形町通りに面した店舗。気軽に食べられるよう、店内には椅子も用意されている。奥では実際に焼いている姿を見ることもできる。

 江戸時代、歌舞伎や浄瑠璃、人形芝居などで賑わった人形町。創業から百年余り、昔ながらの味を守り続けているのが「人形焼本舗板倉屋」だ。もともとは「焼きまんじゅう」という名前で、芝居見物に訪れる人たちに愛されていた。その後、初代が人形町の名前にちなんで「人形焼」と命名したという。

 人形焼の姿は七福神。創業当時は全身像だったが、現在はお顔だけが並んでいる。布袋尊、弁財天、恵比寿、毘沙門、大黒天、寿老人、弁財天ときて、福禄寿のお顔が見えない。「うちの人形焼は6つの神様。お客様の笑顔を合わせて七福神になるんです」と話すのは、四代目・藤井雄太さん。

 店頭では1個から販売しており、焼きたてをいただくことも出来る。カリッとした香ばしい皮の中から、柔らかでふっくらとした餡が顔を覗かせ、独特の美味しさ。食感のコントラストに驚かされる。「翌日の味もいいんですよ」という四代目の言葉どおり、一日置くと皮と餡がしっとりと馴染み、これまた優しい味わいが楽しめる。

 創業以来、手焼きを守り、素材も吟味してきた。きめの細かな生地は、卵黄に砂糖やはちみつなどを加えて一晩寝かせ、翌朝、メレンゲ状にした卵白と小麦粉とを合わせて仕上げている。「一晩寝かせることで、砂糖の粗い粒子が柔らかくなるんです」。餡は、十勝産のあずきとしゅまりという品種のあずきをブレンドしたもの。このほか、餡が入っていない「戦時焼」や、清流に住むことから清らかでめでたい魚とされる鮎をかたどったお菓子などもある。

 人形町で生まれた人形焼。七福神のお顔をありがたく眺めながらいただきたい。

DATA
店名 人形焼本舗 板倉屋
住所 東京都中央区人形町2-4-2
03-3667-4818
営業時間 9:00~(売り切れ次第終了) 日曜・祝日休

※情報・価格等すべて取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。