古の旅人も常用したお灸を、自宅で手軽に 釡屋もぐさ本舗

2015年02月【第52号】
  • (写真左から)煙が出るタイプの『カマヤミニ ソフト』(120入 1,944円)は点火から冷めるまで6分ほど。煙の出ない『灸街道(無香料)』(60入 1,512円)は4分程度。いずれも専用の棒でもぐさを押し出し、紙筒の底についた天然糊を水で濡らして皮膚に密着させる

  • 初代が発案した携帯用もぐさ『切艾(きりもぐさ)』のパッケージデザインは、いまも受け継がれている。

  • 11代目当主の富士治左衛門さん。「ツボは“気”の道すじ。お灸を据える箇所は、厳密でなくても構いません。押してみて気持ちよい箇所、痛い箇所に据えてください」。

  • 上/店内には、鋳物問屋としての歴史を物語る『鉄製大釜残欠』(中央区民有形民俗文化財)が展示されている。かつて防火用として店前に設置していた大釜の一部だという。
    下/親指と人差し指が交差するツボ“合谷(ごうこく)”は、肩こりや眼精疲労、歯痛などに。もぐさを炭化した『灸街道』は、皮膚がデリケートな方にもおすすめ。

日常のおやつから特別な日の贈り物まで、ぜひ手にしてほしい、味わってほしい手みやげをご紹介する「日本橋 手みやげ」。今月は、350年余りの歴史を持つ釡屋もぐさ本舗のお灸をご紹介。

 茅場町駅近くにある釡屋もぐさ本舗は、創業1659年(万治2年)のもぐさ専門店。もともと鋳物師の家系だった初代が廻船問屋として日本橋で独立し、故郷の近江辻村(現在の滋賀県粟東市辻)のもぐさを仕入れ、旅の携帯用として売り出したのが始まりだという。

 お灸の材料であるもぐさは、欽明天皇の時代(500年頃)に仏教の経典とともに伝来した。700年頃には主に僧侶が手がける治療法として鍼療法とともに隆盛を極め、江戸時代には庶民の間にも広まっていった。「かつて旅をする際には多くの人がお灸を持参し、ツツガムシ病や胃腸病など、さまざまな症状に対応していたといいます。基本的な製造方法は、その頃からほとんど変わっていません」(代表取締役 富士治左衛門さん)。

 もぐさは、よもぎの葉を乾燥させ、繊維部分を石臼で挽いて細かくし、竹簾でふるいにかけてふわふわの状態に仕上げたもの。よもぎの総量の3%ほどしかつくれないという。石臼挽きを重ねたもぐさは繊維が細かく、より上質とされている。現在のように紙の筒に収められた商品が登場したのは1970年代のこと。その後、業界で初めて煙の出ないもぐさも開発した。「よく全身にお灸を据える方がいますが、1~3箇所、気になるところに据えるだけで十分です」と富士さん。

 お灸をすると、その場所からじわりと体が温まる。もぐさが燃える静かなひとときは、体も心もリラックスさせてくれるだろう。

DATA
店名 釜屋もぐさ本舗
住所 東京都中央区日本橋小網町6-1
フリーダイヤル 0120-09-4109
営業時間 9:00~17:00 土・日曜・祝日休
URL http://www.mogusa.co.jp

※上記は取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。