江戸の名残が味わえる極上半ぺん 神茂

2014年02月【第40号】
  • 『手取り半ぺん』(410円)。身がしっかりとした青鮫と水分の多いよし切り鮫を使い、季節や個体差を考慮して配合を変えている。生肉から血合い部分を取り除くことで、旨みが凝縮するのだとか。

  • (手前から時計まわりに)『すじ』(431円)は筋繊維のほか軟骨を含み、コラーゲンもたっぷり。『エビしんじょ』(305円)は鯛のすり身に山芋を加えて小海老を練り込んだ品。『利久揚』(126円)は玉葱と青豆をあしらった優しい甘みが印象的。

  • 毎年、心待ちにしているファンも多い『冬の煮こごり』(924円)。寒天やゼラチンを使わず自然に煮こごらせるため、寒い時期しかつくることができない。2月末までの販売。

  • この時季、広々としたショーケースにはおでん種を中心に30種類ほどの商品が並ぶ。春には竹の子や菜の花を使った品も登場する。

暮らしの道具や食から、新しい名物まで。ぜひ手にしてほしい、味わってほしい日本橋の逸品をご紹介する「日本橋 逸品図鑑」。今月は半ぺんや蒲鉾などの名店「神茂」。

 創業320年あまりの神茂。創始者の神崎屋長次郎氏が関西から江戸に出て漁業に従事し、日本橋に店を開いたのが始まりだという。当初は蒲鉾屋を営んでいたが、後に半ぺんの製造も手がけるようになる。江戸時代、鮫のひれ(フカヒレ)は幕府の重要な輸出品の一つで、品川沖や浦安沖には鮫場といわれる漁場があった。ひれを取った後の鮫肉が日本橋の魚河岸で取引されていたことから、これらの活用法として半ぺんが誕生した。

 神茂の『手取り半ぺん』は、ふんわりとした食感と上品な旨みが特徴。半ぺんの材料として最上級とされる鮫肉をミンチにし、高速で摺り上げてクリーム状にする。これを手作業で山型に成形していく際、気泡をたっぷりと生地に抱き込むことから、独特の食感が生まれるのだという。「鮫はほとんど捨てるところがないんです」と営業課長の三村寛さんは教えてくれた。皮は風味豊かな煮こごりに、筋繊維や軟骨部分は巻きすで巻き上げて茹で、おでん種の『すじ』となる。

 そのほかにも店内にはさまざまな練り物が並び、目移りしてしまうほど。「おでんは具材から出た旨みが食材に染み込んで深みを増す料理。魚が大根や卵、こんにゃくまで美味しくしてくれます」。寒い夜、奥深い味わいのおでんを囲んで、体の芯から温まってみてはいかがだろう。

DATA
店名 神茂
住所 東京都中央区日本橋室町1-11-8
03-3241-3988
営業時間 10:00~18:00(土~17:00) 日曜・祝日休
URL http://www.hanpen.co.jp

※上記は取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。