金沢のこころを伝える風格ある和菓子 森八 室町店

2013年10月【第36号】
  • 左/『黒羊羹 玄』(姫棹1,050円)は、加賀藩士の紋服「黒梅染(くろめぞめ)」を映したとされる高貴な艶と上品な甘さが特徴。純度の高い氷砂糖と極上の糸寒天を使用し、三昼夜かけて手づくりされる。右/北海道産の小豆を使ったこし餡を、しっとりとした紅白の求肥で包んだ『千歳(ちとせ)』(168円)。16世紀の兵糧を菓子に転嫁したという歴史ある一品。

  • 左/加賀藩の御用金山として栄えた“宝達山”にちなみ、石川県産の金箔をあしらった『宝達』(126円)。粒あんをもちもちとした皮で包んだ菓子。右/室町四丁目の交差点にほど近い「室町店」。お昼休みにちょっと立ち寄り、午後のおやつや手土産を買うのにも便利だ。

暮らしの道具や食から、新しい名物まで。ぜひ手にしてほしい、味わってほしい日本橋の逸品をご紹介する「日本橋 逸品図鑑」。今月は石川県金沢市発祥の老舗菓子店「森八」。

 寛永2年(1625年)、金沢城下で菓子屋“森下屋”として創業し、明治2年(1869年)に現在の屋号となった森八。390年近く、時代を越えて人々に愛され続けてきた名店だ。東京に初めて店を構えたのは戦前のこと。戦時中は原料調達の難しさからいったん引き上げたが、戦後に再び上京し、昭和49年(1974年)、現在の店舗が生まれた。室町での再開は、戦前の森八を知る人々に大変喜ばれたという。いまも家族三代に渡って買い求めるお客さまがいるそう。

 「もともと茶人好みの菓子を追求していました。当初は進物用が主流でしたが、近年は普段使いのお菓子も充実させています」と店長の古川康治郎さん。店には伝統ある商品が多数存在するが、時代とともに世の中の嗜好が変化してきたことから、より多彩な品揃えになったという。どれも一つから購入できるのが嬉しい。

 店を代表する銘菓のひとつが『黒羊羹 玄』だ。人気の“本練”は小豆を炊いて皮と身を分けるところから職人の手作業。黒糖を用いずに生み出される艶のある“黒”が特徴的だ。そのほか季節の菓子や、金沢から直送される美しい『上生菓子』も目に楽しい。加賀の歴史に思いを馳せながら、上質な和菓子で秋のひとときをゆったりと過ごしたい。

DATA
店名 森八 室町店 ※室町店については、2015年4月にて閉店
住所
営業時間
URL http://www.morihachi.co.jp

※上記は取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。