江戸幕府御用達の店でつくる極上の1本 佐々木印店

2013年04月【第30号】
  • 店内には珍しい所蔵品も多い。(上から)印籠型の印鑑。手間と時間をかけ、遊び心たっぷりに先々代が彫った角印。角印をまっすぐに押すための専用定規。

  • 多種多様な印材が並ぶショーケース。中には、現在は製造されていない貴重な形のものも。ずらりと並ぶ姿は圧巻。

  • 男性用15mm丸の印材。(右上から時計回りに)柘15,330円、象牙84,000円、オランダ水牛38,220円、黒水牛22,575円。いずれも化粧ケースつき(4文字までの場合)。

  • 江戸時代、将軍たちの印章を製作してきた佐々木印店では花押の作成も行っていた。これは徳川家康の花押印注文控え。

  • 俳句の選者をしていた先々代と懇意だった書家・川村驥山が手がけた書。店の看板にも使われている。

暮らしの道具や食から、新しい名物まで。ぜひ手にしてほしい、味わってほしい日本橋の逸品をご紹介する「日本橋 逸品図鑑」。今月は江戸幕府の御用印判師を務めた佐々木家の歴史を受け継ぐ「佐々木印店」。

 佐々木印店の歴史は、寛永20年(1643年)までさかのぼる。初代の佐々木伊賀氏が江戸幕府のご細工所に召し出され、幕府御用達のご印判師となったのが始まりだという。以来、歴代将軍や御三家、御三卿、諸大名の印章を手がけてきた。

 現代はカード時代で、印鑑を押す機会もかつてよりは減ったが、だからこそ、お気に入りの1本を手に入れたい。「昔は銀行印と実印、認印の3本を持つ方が多かったですが、いまは銀行印と実印を兼ねて、少しよい素材で1本お持ちいただくことをおすすめしています」と店主の上原恒明さん。長年の経験から、その人の名前に合わせ、文字の調整や配列、枠組みのバランスを見極める。

 店で扱う印材はどれも最上級のもの。天然素材は個々で色味が異なるため、出会いは一期一会だ。「違いをわかってくださるお客さまが、長年ご贔屓にしてくださるんです」。政治家や日本橋の老舗企業や都内の実業家など、古くからの馴染み客が多いそう。女性の場合は、曲線を帯びた美しい篆書体で名前だけの実印をつくるのもおすすめ。押すのが嬉しくなる逸品だ。

DATA
店名 佐々木印店
住所 東京都中央区室町4-3-3
03-3241-0211
営業時間 9:00~18:00 土・日曜・祝日休
URL http://sasakiinten.com/

※上記は取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。