わくわくレトロさんぽ

お子様ランチ、クリームソーダ、あんみつ……。日本橋には、昔から変わらないメニューを気軽に楽しめるお店がたくさんあります。今月号では、昭和の古き良き時代にタイムスリップしたような気分が味わえる逸品や、日本橋のレトロスポットを紹介します。よく晴れた冬の日に、ちょっとノスタルジックな気分の散策を楽しんで。

2018年03月 【第89号】

大人も食べられるお子様ランチ

子どもの頃にデパートで食べたお子様ランチが、大人になっても食べられたら......。その夢は、日本橋の老舗百貨店に行けば叶えられる。日本橋三越本店のランドマークのお子様ランチは、昭和5年(1930年)に、「子どもに夢のある食事を」という願いから提案された"御子様洋食"が前身。帝国ホテル 日本橋髙島屋特別食堂は、「大人にもお子様ランチを」というコンセプトで、海老フライやポテトフライなどがワンプレートで提供される。懐かしくてわくわくするひと皿を、心ゆくまで味わおう。

お子様ランチ

『お子様ランチ』(ジュース付税込864円)。

日本橋三越本店

RETRO POINT(上)光を取り込むために設けられた中央ホールの吹き抜けの天井にあるステンドグラスや、その周辺の美しい装飾は見もの。(中央)昭和10年(1935年)から中央ホール2階バルコニーに設置されているアメリカのマイテー・ウェルリッツアー社製のパイプオルガン。(下)江戸桜通りから地下へとつながる入口の案内板は、上品かつカラフルなステンドグラス製。「地下鐵」と書かれた旧字体に時代を感じる。

白い煙を上げながら登場する赤い蒸気機関車に、子どもも大人も一瞬にして心を奪われる。この『お子様ランチ』は、かつてはスペースシャトル型、UFO型などの器もあったそう。2017年は1年間で5,902食を売り上げた。


ランドマーク 東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本店 新館5階
11:00~19:30(L.O.19:00)/不定休(三越に準ずる)
(問)☎ 03-3241-3831
mitsukoshi.mistore.jp/store/nihombashi/restaurant/index.html

お子様プレート

『お子様プレート』(クリームコーンスープ・デザート付税込1,620円)。

日本橋髙島屋

RETRO POINT(上)正面玄関の左右壁面に位置する水飲み場跡は大理石の素材に蓮弁文が彫刻され、和洋折衷のデザインが美しい。また、玄関口上部の透かし欄間には花菱模様と雷文が見事な調和を奏でる。(下)昭和8年(1933年)から稼働しているアメリカのオーチス社製手動式エレベーター。木目調の珍しい大理石ステラティーテの壁面。蛇腹のドアを開けると磨き抜かれた真鍮の輝きが。

『お子様プレート』は子どもが好きな海老フライとミートボールをケチャップ味のチキンライスと組み合わせた、大人にも昔懐かしいワンプレートになっている。


帝国ホテル 日本橋髙島屋特別食堂 東京都中央区日本橋2-4-1 日本橋髙島屋 8階
11:00~21:30(L.O.20:30) (問)☎ 03-3211-4111
www.takashimaya.co.jp/tokyo/restaurant

昭和な気分に浸れる懐かしスイーツ

りんごのタルト、クリームソーダ

温かいタルトと冷たいアイスクリームの組み合わせが女性に人気の『りんごのタルト』(ドリンクセット 税込950円)。昔懐かしい『クリームソーダ』(税込670円)もおすすめ。

げるぼあ

RETRO POINT(上)パリの街角にあるカフェのような外観。年季の入った赤いひさしが味わい深い。現在まで内装は何度かリニューアルしてきたが、外観はオープン当初から変わらない。(下)店主 前田さんがフランスで買い付けたアンティークがさりげなく置かれた店内。壁には初代店主から代々コレクションしてきた絵画が並ぶ。

赤いひさしが目印のげるぼあは、創業約60年の喫茶店。三代目の店主 前田浩孝さんが一貫して守っているのは「昭和から変わらない味」。創業当時からレシピを変えていないというオムライスが、ビジネスマンを中心に人気だそう。店内は席数も多くて広々。気取らない内装が落ち着く喫茶店だ。ガラス張りの窓から、日本橋さくら通りを行き交う人々をのんびり眺めたり、スイーツを食べながらゆっくりティータイムを楽しむのもいいだろう。

げるぼあ 東京都中央区日本橋3-8-6
☎03-3275-3062
月~金曜8:00~18:00、土・日曜9:00~17:00 不定休

都会のオアシスで味わう深煎りコーヒー

ホットコーヒー

80年代の初めから一貫して同じ豆を使っている『ホットコーヒー』(340円)。やや酸味があるのが特徴で、常連客には11枚綴りチケット(3,400円で一杯無料)も人気だとか。

珈琲ゆう

赤いひさしとアーチ形の窓、色とりどりの花が咲いた花壇がメルヘンチックな印象の外観。

珈琲ゆう

RETRO POINT(上、右下)店主 松澤さんが、横浜や西荻窪のアンティークショップで買い集めたコレクション。古時計は現役で動く。品質保持のため、定期的なメンテナンスは欠かせないそう。(下)かつてお店に置いていたマッチ箱に使用していた書体をそのまま看板に使用。※現在、マッチは製造していない。

日本橋兜町にある珈琲ゆうは、店主 松澤佐知子さんのお母様が「金融の街、兜町で店を開こう」と、昭和42年(1967年)に始めた喫茶店。戦前から建つビルの扉を開けると、ジャズの心地良い音色と古き良き時代のアンティークが、非日常的な空間を作り出している。一杯ずつネルドリップで丁寧に淹れたコーヒーを求めて、兜町で働くビジネスマンたちが早朝からこの店に集う。50年以上変わらないからこそ、人々に愛されているのだろう。

珈琲ゆう 東京都日本橋兜町9-6
☎03-3668-8098
月~金曜7:00~17:00 土・日曜・祝日休

江戸っ子の情熱が詰まったあんみつ

クリームあんみつ

『クリームあんみつ』(税込900円)は、まろやかな甘さのこし餡と、のどごしのいい寒天が口の中で溶け合い、ほどよく塩気のある豆がアクセントに。蜜は黒蜜と白蜜から選べる。

初音外観

表通りに面していて、看板も目立つので見つけやすい。ショーケースに並ぶ甘味のサンプルに立ち止まる人も多い。

茶釜

お茶に使用するお湯は、お祖母様の時代から、店の奥にある茶釜で沸かしている。「お湯が丸く(まろやかに)なるんですよ」と石山さん。

初音

RETRO POINT(左)店内の間仕切りガラスや包装紙のモチーフは歌舞伎の「義経千本桜」の静御前が持っている初音の鼓をデフォルメしたもの。店主 石山さんのお父様がデザインしたそう。(右)ガラス戸や障子にも、初音の鼓の紐をイメージした美しい装飾が施されている。

日本橋人形町にある甘味処 初音は、天保8年(1837年)創業。大正末期までは、豆かん、お汁粉などを提供していたが、昭和2~3年頃に餡を乗せたあんみつを出すようになった。豆は北海道富良野産の赤えんどう、餡は北海道十勝産の小豆、黒蜜は沖縄諸島産の黒糖、寒天は伊豆七島産の天草と、材料も産地にこだわっている。「豆も寒天もやわらかめに、など全体のバランスを大切にしています」と、店主 石山美由紀さん。

甘味処 初音(はつね) 東京都中央区日本橋人形町1-15-6 五番街ビル1階
☎03-3666-3082
月~土曜11:00~20:00(L.O.19:30)、日曜・祝日11:00~18:00(L.O.17:45) 年中無休

歩いて見つけた、日本橋のレトロスポットを一部紹介します。

立ち止まってじっくり眺めると、おもしろい発見があるかも。

壽堂

壽堂ニッキを効かせた人形町の名物手みやげ『黄金芋』を販売する和菓子店のビルはグレーと赤の配色が斬新。

世界湯

世界湯人形町の名物銭湯で、「レトロ銭湯」として親しまれている。入口は「男湯」、「女湯」で分かれており、中に入ると番台がある。

海渡ビル

海渡ビル昭和3年(1928年)に建てられたビルで、存在感たっぷりのアーチが特徴。施工当時はタイル貼りの壁面だった。

HARIO本社ビル

HARIO本社ビル昭和7年(1932年)施工の西欧古典主義様式によるデザインのビル。重厚な印象の玄関周りや、柱の装飾は一見の価値あり。

三越前駅コンコースの柱の装飾

三越前駅コンコースの柱の装飾見逃してしまいがちだが、三越前駅のコンコースの柱の上部にはレトロな装飾が施されている。通りかかったらチェックしてみて。

大勝軒

大勝軒日本橋本町の名所といえばこの中華料理店。緑のタイル貼りの外壁が目を引くが、色とりどりのタイルで作られた看板にも注目。