山王祭の担ぎ手たち

“江戸三大祭り”として名高い「山王祭(さんのうまつり)」。
神田祭と交互に行われている隔年祭で、今年は6月7日(木)から17日(日)まで、
さまざまな祭儀が斎行されます。そのうち、日本橋周辺で楽しめるのは、
「下町連合渡御(したまちれんごうとぎょ)」と「神幸祭(しんこうさい)」。
今回はお祭りの見どころと、下町連合渡御の担ぎ手たちをご紹介します。

2012年06月 【第20号】
山王祭

山王祭 2012年6月7日(木)~17日(日)
場所:日枝神社、日本橋日枝神社(摂社)、氏子町会、他
(問)日枝神社 TEL 03-3581-2471 www.hiejinja.net

日本橋界隈での祭礼行事
6月8日(金) 神幸祭
~13:25頃 日本橋日枝神社(摂社)
~14:45頃 日本橋交叉点
~15:00頃 京橋三丁目
6月8日(金) 各町会の渡御
(開始時間・場所は各町会により異なる)
6月9日(土) 各町会の渡御
(開始時間・場所は各町会により異なる)
6月10日(日) 下町連合渡御
9:30~ 日本橋日枝神社(摂社)から宮出しされ八丁堀すずらん通りへ
13:00~ 京橋北詰から中央通りを日本橋へ

(問)日枝神社山王祭下町連合祭礼委員会 www.tokyo-ekimae.org/sannou

山王祭

楊洲周延 筆「江戸風俗十二ヶ月之内 六月 山王祭」(日枝神社宝物殿蔵)

楊洲周延 筆「江戸風俗十二ヶ月之内 六月 山王祭」(日枝神社宝物殿蔵)

日枝神社の鳳輦2基と宮神輿。祭神を乗せている鳳輦は、担ぐのではなく車で曳く。

日枝神社の鳳輦2基と宮神輿。祭神を乗せている鳳輦は、担ぐのではなく車で曳く。

神幸祭で鳳輦が摂社に宮入されるところ。ここで御旅所祭を執り行う。

神幸祭で鳳輦が摂社に宮入されるところ。ここで御旅所祭を執り行う。

日本橋日枝神社(摂社)の社殿。緑に囲まれた境内は人々の憩いの場。

日本橋日枝神社(摂社)の社殿。緑に囲まれた境内は人々の憩いの場。

山王祭とは 江戸の産土神(うぶすながみ)として、徳川将軍家から庶民まで広く信仰を集めてきた日枝神社。古くは「山王社(さんのうしゃ)」の名で親しまれ、江戸城鎮護の神として崇敬されてきた。ここで行われる山王祭は、徳川時代、三代将軍家光公より、歴代将軍が上覧拝礼する「天下祭り」として盛大を極めた。一方で「江戸三大祭り」にも数えられ、昔から「神輿深川、山車神田、だだっ広いが山王様」と言われている。祭神を乗せた鳳輦(ほうれん)が氏子区域を巡幸する「神幸祭」(今年は6月8日)では、供奉員500名が王朝装束に威儀を正し、永田町、麹町、霞ヶ関、皇居坂下門(参賀・神符献上)、丸の内、日本橋、京橋などを1日かけて練り歩く。

日本橋日枝神社(摂社) 摂社の歴史は、天正18年(1590年)に家康が江戸城に入り、御旅所(おたびしょ)のあった八丁堀・北島(鎧嶋)祓所まで神輿が船で神幸されるようになったことに遡る。御旅所とは、神社の祭礼の際、神輿が巡行の途中で休憩または宿泊する場所のこと。寛永年間(1624年~1643年)に、現在の摂社の地が山王祭の御旅所に定められた。近隣の人々からは、山王さん、御旅所、摂社と呼ばれて親しまれている。今年の神幸祭の立ち寄りは13時25分頃の予定。

日本橋日枝神社(摂社)
東京都中央区日本橋茅場町1-6-16
TEL 03-3666-3574

見せ場は神輿を高く掲げる「差し」 日本橋のたもとがビューポイント

加藤仁さん(割烹 嶋村 九代目)

髙島屋の中央通り入口でも"差し"が行われるとか。「ものすごい迫力で、必見です!」

加藤仁さん(割烹 嶋村 九代目)
参加歴:30年
八重洲一丁目東町会
小さい頃は子供神輿を担ぎ、大人神輿にデビューしたのは高校生のとき。当時は白い半纏だったので、町会の青い半纏に憧れていました。23歳で町会青年部に入り、初めてこの半纏を着た時は嬉しかったですね。歴史の重みを背負った気がしました。この町では先輩たちがいろいろ教えてくれます。その度に「こうして脈々と文化が受け継がれてきたんだな」と感じます。伝統ある山王祭を、ぜひ体験してください。

なんともいえない高揚感 みんなの心がひとつになるのが魅力

森美佐恵さん(和菓子店「ときわ木」若女将)

結婚して4 年目。ご主人との出会いもお祭りが縁だという。

森美佐恵さん(和菓子店「ときわ木」若女将)
参加歴:6年
江戸橋連合(日本橋一丁目東町会)
結婚前は髙島屋に勤務し、日本橋二丁目通町会の神輿を担いでいました。もともとお祭りが大好きで、「自分も担いでみたい」と思い、同僚と参加させてもらっていたんです。結婚後に所属した江戸橋連合では、約400名がお祭りを支えています。神輿は一基を50名で担ぎ、交代しながら進みます。以前、この町に住んでいた方も担ぎに戻ってこられるんですよ。とにかく、見ているだけでもワクワクするお祭りです。

歴史ある日本橋の"粋な祭り姿"をぜひ見に来てください

安部照彦さん(株式会社NBFオフィスマネジメント)

中央通りを10基の神輿が連なるさまは圧巻。「今年も仲間たちと、この半纏で頑張ります」。

安部照彦さん(株式会社NBFオフィスマネジメント)
参加歴:20年
日本橋一丁目町会、他
深川出身なのでお祭りが大好きなんです。もともと、祭り好きが集まる同好会「鳳王睦(ほうおうむつみ)」の会長をしていて、年に12回ほど各地のお祭りに参加しています。山王祭も、以前はそちらの半纏で神輿を担いでいました。4年前から三井の社章が入った会社の半纏を着て、下町連合渡御に参加しています。山王祭は「天下祭り」だけあって、とにかく粋。担ぎ方からマナーまで何もかも綺麗なんですよ。ここならではの魅力です。

山王祭を支える町火消たち

、町火消「ろ組」の小頭を務める鹿島彰さん

どの頭も自分のつくる神酒所や御仮屋の屋根に自信があるという。「町の人に褒められるのが一番嬉しいんです」。

今回、表紙にご登場いただいたのは、町火消「ろ組」の小頭を務める鹿島彰さん。家業である鳶(とび)職を継ぎ、10代の頃から火消の半纏を着ている。日枝神社を氏神とする町火消の組には、ろ組、せ組、も組、百組などがある。通常は町内の手伝いをしたり、消防団としての役割を担うほか、各地の行事にも参加する。山王祭では準備段階から携わり、神輿が通る際の警護も行う。役付の半纏を着る鹿島さんには、神酒所(*1)や御仮屋(*2)の設営、軒提灯、神輿の飾りつけといった仕事もある。「昨年は各地で祭りが中止になったので、今年はみんな意気込みが違う。いつも以上に気合いが入っていますよ」。

*1 神酒所(みきしょ)...祭神に神酒などの神饌をお供えする場所。御仮屋と一緒に建てられることが多い
*2 御仮屋(おかりや)...神輿が一時、待機する場所

誰もが熱くなる! 下町連合渡御(とぎょ)
6月10日(日)第一部 9:30~ 第二部 13:00~
氏子同士のさらなる交流を目的に、6年前から始まった「下町連合渡御」。日本橋地区と京橋地区、八丁堀・茅場町地区が連合し、総勢10基の神輿が練り歩く祭礼だ。第一部は、9時30分に日本橋日枝神社(摂社)から神輿の半分が宮出しされ、茅場町・八丁堀を練り歩く。そして、最大の見せ場である第二部は、13時に京橋北詰(警察博物館前)から中央通りを北上して、日本橋でUターンする。

制作協力・画像提供/日枝神社、日本橋六之部連合町会青年部 日八会
※文中の名称・年号等は日枝神社提供資料に基づく