丁寧な仕事が光る江戸前の味 喜寿司

2013年04月【第30号】
  • 『お昼の握り8貫』(2,625円)。日によってタネが変わる。この日はキュウリ巻き、鮪、すみ烏賊、かじき、帆立貝、玉子焼き、蛸、こはだ、やり烏賊の煮たもの、大根のたまり漬け。

  • 三代目とご子息たち。お二人とも会社勤めを経て、店を継ぐためにこの道に入った。脈々と伝統の味が受け継がれていく。

  • 昭和27年に置屋を改装して建てた店舗。東京出張の際に立ち寄るのを楽しみにしているビジネスマンや三世代で訪れる家族など、食通たちに愛されている。

人形町で伝統の味を守り続ける「喜寿司」。この店ならではの味を目当てに、遠くから足を運ぶファンも多い。夜と同じ食材を使った、ちょっと贅沢なおひるごはんをご紹介。

老舗の風格が漂う静かな店内。ゆったりと寿司を楽しむ人々が、新鮮な旬のタネ、昔ながらの繊細な仕事に舌鼓を打つ。

 明治後半、柳橋に店を構えていた喜寿司のご長男が、この地に店を開いたのが始まり。「昔は花街の名前を呼び名に使っていましたから、“芳町の喜寿司”と言われていました」と話すのは三代目の油井隆一さん。

 喜寿司の味といえばなんといっても、江戸前ならではの隠れた仕事が入った握り。酢でしめたこはだ、いかや穴子の煮たもの、煮はまぐりなどは常連客に人気だ。いかや穴子に添える「つめ」は、穴子の頭や中骨に鰹節や昆布、大根やにんじんを加えて24時間体制で煮る。大きな鍋を使い、最後には小さな鍋になるまで煮詰めていくのだという。「手間がかかるので、こういったつくり方をするところは減っていますね」。鮪やかじきには煮きりが引かれ、形が独特な玉子焼きには、芝海老のおぼろが挟んである。

 魚は海老を除いて、すべて天然もの。それはお昼のメニューでも変わらない。「昼と夜で材料に差をつけたくないんです」。酢飯には米酢と酒粕からつくった赤酢を合わせ、塩を加えている。砂糖は一切使わないため、すっきりとした味だ。海苔も厳選し、佐賀産のものを使っている。

 「お客さまには楽な雰囲気で食べていただきたい。思う存分召し上がっていただくもよし、レストランの帰りに2~3貫ちょこっとつまむもよし。お寿司はそれぞれお好きな召し上がり方でいいと思っています」。上質な食材と伝統の技がリーズナブルにいただけるお昼。ぜひ夜デビューの前に試してみたい。

※店名の「喜」は、正しくは「七」が三つの漢字

DATA
店名 喜寿司(きずし)
住所 東京都中央区日本橋人形町2-7-13
03-3666-1682
営業時間 11:45~14:30、17:00~21:30、土曜11:45~21:00 日曜・祝日休