粋な芸人たちを魅了した手焼きの味 にんぎょう町 草加屋

2013年03月【第29号】
  • 上/三木助氏が金庫に隠して食べたという逸話がある『手焼き煎餅』(写真右)。勘三郎氏が好んだ『おこげ』(写真左)は焼き目が香ばしく通好みの一品。いずれも北海道産のうるち米を使用している。各500円(5枚入)。
    下/海老の風味が楽しめる『海老せん』は可愛らしい桜のかたち。これからの季節の手土産やお茶うけにぴったり。250円(100g)。

  • この道50年の石川さん。早朝から2時間かけて炭火をおこし、昼過ぎまで焼き続ける。「焼き上がりから数日経った頃がおすすめ。醤油が生地に馴染むんです」。

  • 上/甘酒横町の中ほどにある店舗。通りに面したガラス窓から作業風景が見えるので、足をとめて見入る人も。
    下/店内で焼かれた煎餅のほか、草加の工場でつくられたもの、厳選した品など60種類以上が並ぶ。

昔ながらの製法と味を守り続ける「にんぎょう町 草加屋」。埼玉県の草加で煎餅づくりを手がけていた先代の石川とくさんが、昭和3年(1928年)にこの地に店を構えたのが始まりだ。

 店内ではご主人の石川順道さんが、一日に400枚ほどの煎餅を焼いている。「草加煎餅で大事なのはうるち米をせいろで蒸すことと、焼く際に備長炭を使うこと。蒸すことでコシのある美味しい生地が出来上がり、備長炭の遠赤外線が米のうま味と甘みを引き出してくれるんです」。

 生地は草加の工場でお兄さまがつくっているそう。200℃以上の高温になると米のうま味が損なわれてしまうため、一気に火を通すのではなく、じっくりと焼いていく。焼き上がったらすぐにジュッと醤油を絡ませる。「熱いうちでないと中まで味が染みないんですよ」。

 店内で焼かれたこの『手焼き煎餅』は、数ある商品の中でもいちばん人気。かつて人形町に寄席の末広亭があったことから、噺家の三代目・桂三木助氏もこの品をこよなく愛したという。パリッとした歯ごたえの生地に醤油ダレが染み込み、何とも深い味わいだ。そのほか17代目・中村勘三郎氏の注文でつくり始めた『おこげ』も人気。名人たちに愛された風味豊かな煎餅を、ぜひお試しあれ。

DATA
店名 にんぎょう町 草加屋
住所 東京都中央区日本橋人形町2-20-5
03-3666-7378
営業時間 9:00~18:00(土曜10:00~17:00) 日曜・祝日休

※上記は取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。