刃物の歴史に日本橋文化を垣間見る うぶけや

2013年02月【第28号】
  • 上から『糸切り鋏』(5,250円)、『赤ちゃん用爪切り』(3,990円)、『食用鋏』(8,400円)。赤ちゃん用爪切りは、子どもの成長と共に糸切り鋏に転用できる。

  • 2種類の回転砥石で肉厚を調整した後、目の細かい砥石を使い、昔ながらの手砥ぎで刃先を仕上げる。九代目のご子息と共に作業する研ぎ直しは、毎週木曜締め切りで月曜仕上がり。

  • 上/毛抜きは口幅が4種類。6mm(3,150円)、3mm(3,150円)、2mm(3,360円)、1.5mm(3,360円)。小さいサイズは逆さまつげに便利。抜き心地が鈍くなったら、研ぎ直しも可能。下/おすすめの『包丁』は左から三徳型(13,650円)、ペティナイフ(8,925円)、鎌形(16,800円)、鎌型・小(12,600円)。水に強く錆びない素材。ほかに鋼を使った品もある。

  • 上・中/風格ある陳列棚にずらりと刃物類が収められている。立てかけられているのは、華道各流派の鋏と盆栽用の鋏(写真中)。下/最近では海外からの観光客も多く訪れる。オフィス街の中にあって、ひときわ目立つ看板。明治期の高名な書家・日下部鳴鶴の門下である海鶴(かいかく)の揮毫によるものだとか。

天明3年(1783年)創業の「うぶけや」。屋号は、“赤ちゃんの産毛も剃れる、切れる、抜ける刃物”が由来だとか。

 木造三階建ての趣ある店舗は、昭和2年に建てられたもので、店内の総桑でつくられた大きな陳列棚や、唐傘天井が見事だ。昭和50年頃に改装した際には、これらのしつらいを保管しておき、完成後にそっくりそのまま移設したのだという。

 代表的な品は包丁、鋏、毛抜き。種類が豊富で、用途や好みに合わせて選ぶことができる。日本橋を舞台にした小説「新参者」(東野圭吾著)に登場した『食用鋏』も人気の品だ。「もともとこの辺りは花柳界で賑わっていたんです。芸者衆がお客さまのために、食べにくい食材を小さく切るのに使ったのが始まり。“懐中鋏”とも呼ばれていました。いまは介護や離乳食にお使いになる方が多いですね」と八代目当主の矢﨑豊さん。日本橋らしいエピソードが詰まった鋏といえる。

店の奥にある工房では「うぶけや」の製品のみならず、他店の刃物の研ぎ直しも引き受けている。刃物はきちんと手入れをすれば長年愛用できる。日常的に使う道具だからこそ、一度手にとれば使い心地の良さを誰もが実感できるはず。使うたびに喜びが味わえる、一生ものの品をぜひを手に入れたい。

DATA
店名 うぶけや
住所 東京都中央区日本橋人形町3-9-2
03-3661-4851
営業時間 9:00~18:00(土曜~17:00) 日曜・祝日休
URL http://www.ubukeya.com/

※上記は取材時の情報です。現在は異なっている場合がございます。予めご了承ください。