バスでめぐる 街並み散策

日本橋エリアの東西をめぐる無料巡回バス「メトロリンク日本橋Eライン」が運行を開始しました。おでかけするにも気持ちがいいこの季節に、バスを使い、ちょっと歩きながら趣のある建物や街並みを眺めてみませんか。時を重ねた佇まいや凝らされた意匠など、新たな視点でめぐると、いつもと違った日本橋に出会えそう。

2016年11月 【第73号】

東西を結ぶ巡回バスが運行!

メトロリンク日本橋Eライン

メトロリンク日本橋Eライン 東京駅八重洲口から浜町・人形町・兜町を結ぶ無料巡回バスが10月1日から運行を開始。徒歩や地下鉄ではちょっと行きにくいエリアも、便利に街の回遊ができるようになった。平日は8:00~ 18:00、土・日曜・祝日は10:00~20:00の時間に約22分間隔で巡回。ぜひ買い物や散策などに利用してみて。

【A】大正時代から続く石造りの看板建築

江戸屋外観イラスト

外観をよく見ると石造りのふくろうが12羽鎮座する。ふくろうは商人の間で招福の縁起担ぎとして親しまれているそう。

江戸屋内観

棚や引き出し一つひとつは創建当初のもので、ガラスの玄関や窓などとともに歴史を感じさせる。

江戸屋 刷毛とブラシの専門店である江戸屋は、享保3年(1718年)に創業し、店舗は大正13年(1924年)築。外観にはハケをイメージした縦のラインが大胆に用いられ、1階は店舗兼事務所で2階は住まいの看板建築となっている。毛並みにくせがつかないように、多数のブラシが吊られているのも見もの。登録有形文化財。

東京都中央区日本橋大伝馬町2-16 ☎ 03-3664-5671
9:00~17:00 /土・日曜・祝日休
www.nihonbashi-edoya.co.jp

【B】角切りの正面玄関が珍しい銀行建築

特製江戸前ばらちらし

溝彫の列柱が強調され、柱や窓格子の装飾が細やかに配されている。玄関まわりにある照明や看板は可愛らしさを添える。※内観は見学不可

HARIO本社ビル 耐熱ガラスメーカーのHARIO。昭和7年(1932年)に川崎貯蓄銀行富沢町支店として竣工された建物に、本社ビルとして2000年に移転した。ギリシャ・ローマの古典様式である「新古典主義建築様式」が採用され、建設当時は2階建てだったが、その後地下1階・地上3階建てに増築。登録有形文化財に指定されている。

東京都中央区日本橋富沢町9-3
☎ 03-5614-2101(代)
www.hario.com

【C】高名な書家による看板が際立つ町屋建築

うぶけや外観イラスト

町家建築の外観に、ひと際目を引く寄せ書看板は明治期の高名な書家・日下部鳴鶴の門下である四天王各人が一字ずつ揮毫(きごう)した。

うぶけや内観

改築の際、そのまま外して付け替えられた唐傘天井。うぶけやの商標が記された中央の照明ほか、建具などは特注でつくられ建築当初からのものが多い。

うぶけや 天明3年(1783年)創業の各種刃物を専門としたうぶけや。建物は昭和2年(1927年)築、昭和50年(1975年)改築で、唐傘天井が印象的な店内には和洋包丁や各種鋏はさみ、毛抜きなどがずらり。ディスプレイも昔のまま、明治時代初期につくられた日本初の西洋鋏も現存する。玄関上には魔除けや招客にご利益があるとされる蹄鉄も見られる。

東京都中央区日本橋人形町3-9-2
☎ 03-3661-4851
9:00~18:00(土曜~ 17:00)/日曜・祝日休
www.ubukeya.com

【D】花街の面影を残す人形町

花街の面影を残す人形町

人形町二丁目の一角。歯科として営業されていた家屋と、大正12年(1923年)創業で昭和27年(1952年)に置屋を改装した喜寿司が軒を連ねる。

日本橋人形町二丁目の一角 江戸時代、浅草に移転するまで幕府公認の遊郭・吉原があった人形町。明治~昭和にかけて、人形町は芸妓の茶屋などが多数集まる花街として賑わった。その名残が町に点在し、古い木造建築物が多い。一歩路地に入れば、老舗の風格ある名店からレトロなお店まで、さまざまな趣の建築物に出会える。

【E】証券会社の街・兜町を代表する建築物

日証館

地上5階・6階と塔屋がひな壇状となっている。地上からは正面・側面を見て、クルーズで日本橋川から背面を見ると、外観の構造の違いを楽しめる。

日証館 証券会社が多い兜町にある日証館は、日本株式取引所によって昭和3年(1928年)に竣工された。一時期、株式の取引も行われ、重厚な意匠の建物が立ち並んだウォール街の雰囲気を残す。古典様式風のシンプルな装飾のなかに、入口と上層階のアーチ窓と外壁が美しく映える。2008年には入口と共用部を改装した。

東京都中央区日本橋兜町1-10
☎ 03-3661-7771(平和不動産 街づくり推進室)
www.heiwa-net.co.jp

【F】重厚で品格のある日本初のデパート

日本橋三越本店

西洋古典様式の重厚な意匠で統一。外観は水平、垂直の線が強調され、アールデコ風の装飾なども採用している。

日本橋三越本店 前身は呉服店・越後屋で、日本初のデパートである日本橋三越本店。大正3年(1914年)に建築され、増改築を重ねた本館には、壮大な天女像がそびえる5層の吹き抜けの中央ホール、大理石を用いた壁面や装飾により西洋劇場を思わせる三越劇場、特別食堂など見どころも多い。今年7月に国の重要文化財に指定された。

【G】オフィス街に佇む南欧風のレトロ喫茶

Lafrese(ラフレッサ)外観

右/季節のフルーツを使った日替わりの『ケーキセット』(税込600円)はコーヒーか紅茶が選べる。しっとりした自家製ケーキはクリームと絶妙なバランス。
左/屋根の上には風見鶏が取り付けられ、入口付近の緑も年月を感じさせる外観。カフェの前は焼き鳥屋だったとは思えないほど。

Lafrese(ラフレッサ) 昭和30年代の建物を大幅に改築し、カフェとして昭和52年(1977年)に創業したラフレッサ。ビル街の谷間にある店に足を踏み入れると、ゆったりとした時間が流れ、雑味のないコーヒーがいただける。窓や格子も特注のこだわりが随所に見え、製造が終了しているサイフォンを長年大事に使用している。

東京都中央区日本橋本町4-2-8
☎ 03-3241-2613
7:00~19:00
土・日曜・祝日休

まだまだある日本橋の名建築

【H】山二証券・フィリップ証券 隣接する2つの証券会社は同じ建築家の設計(ともに現地へ移転)。山二証券は昭和11年(1936年)築、黄土色を基調とした石やタイルを使用したスパニッシュ風建物の一方、フィリップ証券は昭和10年(1935年)築、重厚な石造りで古典主義の建築様式。


【I】日本橋 玉ゐ 本店 昭和28年(1953年)に建てられた酒屋を改築して、2004年に穴子専門店・日本橋 玉ゐ 本店がオープン。木造2階建てで、飾り窓や古い金庫など、そこここに往時を偲ばせる要素が残る。


【J】日本橋髙島屋 昭和8年(1933年)竣工。重厚な西欧様式に和風建築などの日本的な装飾意匠が融合し、2009年デパート初の重要文化財に指定された。大理石の柱が並ぶ吹き抜け、創建時からの蛇腹式エレベーターなど見どころが多い。


【K】日本銀行本店 本館 明治29年(1896年)竣工、石積みレンガ造りの本館は国の重要文化財。柱やドームなどのバロック様式に、規則正しく並ぶ窓などのルネッサンス様式を採用した「ネオ・バロック建築」。秩序と威厳が表現されている。
※10月上旬より仮囲いによる工事順次開始


【L】三井本館 関東大震災の教訓から、その2倍の耐震と「壮麗、品位、簡素」をモットーに設計し、アメリカの新古典主義的なデザインを採用。昭和4年(1929)3月に竣工され、当時の最新技術が惜しみなく用いられた。国の重要文化財指定。