日本橋で時節を嗜む

日本人は古来より、はかなく移りゆく季節を大切に味わってきました。食や衣服、さまざまな行事を通して自然を敬い、慈しみながら、暮らしの中に取り込んできたのです。1月の終わりから2月の始めは、二十四節気で冬から春への移り変わりのとき。一年で最も寒い時節「大寒」から、季節の節目を意味する「節分」を経て、新しい年の幕開けである「立春」へと向かいます。春の足音はまだまだ遠くても、小さな景色の変化に心を留めながら暮らすそんな古きよき日本人の生き方を、ぜひともお手本にしたいもの。日本橋なら、季節を愛でるに相応しい逸品たちに出会えます。

2012年02月 【第16号】

お煎茶で二十四節気を味わう

二十四節気のお茶 煎茶「大寒」「立春」

二十四節気のお茶 煎茶「大寒」「立春」/各100g袋入1,575円

山本山 二十四節気ごとに期間限定の煎茶を販売している山本山。
気候によって好まれる味わいが異なることから「季節をより一層深く味わっていただきたい」との思いで生まれた商品だ。
節気ごとに茶葉をセレクトして、発売2日前に袋詰めし、作りたての美味しさを届けている。1月21日~ 2月3日まで販売する「大寒」は、静岡県産の茶葉を使った香り高く味の濃いお茶。
2月4日~ 2月18日まで販売する「立春」は、京都府産の茶葉を使い、まろやかな味わいが特徴だ。いずれも商品がなくなり次第、販売終了なのでお早めに。

東京都中央区日本橋2-5-2
TEL 03-3281-0010
営業時間...10:00~18:00
無休(元旦除く)
www.yamamotoyama.co.jp

口の中でとろける甘さとほろ苦さ

「福梅」

「福梅」 310円

長門 季節の移り変わりを繊細に表現する和菓子の世界。寒中、真っ先に花を咲かせる梅は、万葉集で数多く歌われ、屏風絵や着物などにも好んで描かれてきた。
そんな可憐な梅の花をかたどった「福梅」は、立春に相応しいお菓子。江戸時代、八代将軍吉宗の治世に徳川家の御菓子司を拝命した老舗・長門では、数百ある木型を用いて、季節に合わせた上生菓子を常時7 ~ 8種類つくっている。その年の気候を鑑みながら、一品ずつ商品を入れ替えていくという。丸みを帯びたフォルムと薄紅色の肌合いがなんとも愛らしい「福梅」を、季節が巡ってしまう前にぜひとも味わいたい。

東京都中央区日本橋3-1-3
TEL 03-3271-8966
営業時間...10:00~18:00 (日曜・祝日休)

冬から春先にかけては新海苔の季節

「梅の花」1号缶

「梅の花」1号缶(全型10枚分 16袋入 1袋8切5枚)2,625円

山本海苔店 橙色の地に梅が咲き誇る缶でお馴染み、山本海苔店の「梅の花」。なぜ"梅"が商品名に冠されたかというと、嘉永2年(1849年)の創業当時、江戸前の上質な海苔は梅の香りが漂う時期に採取されていたから。
現在では11月下旬から2月頃までが海苔の収穫期。11月末には新海苔が店頭に並ぶ。おりしも2月6日は"海苔の日"。大宝元年(701年)に制定された大宝律令に海苔を租税として納めた記述があることから、その施行日を西暦に換算した2月6日が記念日に定められたという。いつもは食卓で名脇役の海苔をたまには主役に据え、早春ならではのメニューを楽しむのもいい。

東京都中央区日本橋室町1-6-3
TEL 03-3241-0290
営業時間...9:00~18:30 (無休、元旦除く)
公式サイトには海苔を使ったレシピ集も。
www.yamamoto-noriten.co.jp

冬の滋味あふれる京のおばんざい

やさい昆布

やさい昆布 / 100g 735円)

永楽屋 日本人の食に欠かせない「米とお茶」。永楽屋には、その二つを美味しくする"からいもの(佃煮)"と"あまいもの(菓子)"が並ぶ。
この時期のおすすめは「やさい昆布」。道南尾札部産の昆布をはじめ、筍、れんこん、ごぼう、椎茸、実山椒など厳選した国産素材を贅沢に炊き合わせた一品だ。
かつて旧暦の正月には筍、れんこん、ごぼうなどを雑煮やはなびら餅にして食べる習慣があった。根菜は滋養があり、体を温める効果も高いことから寒い季節にぴったりの食材。
やわらかな昆布との取り合わせは、どこか懐かしく優しい味だ。

東京都中央区日本橋本町1-4-1
TEL 03-3241-3868
営業時間...9:00~18:00(土~19:00)
日曜・祝日休
www.eirakuya.co.jp

一年に一度だけの縁起酒に酔いしれる

「立春朝搾り」

「立春朝搾り」720ml/1,575円(純米吟醸生原酒もしくは特別純米生原酒)
発売日...2/4(土)/予約締切...1/23(月)日本名門酒会加盟酒販店ま

日本名門酒会 立春の朝、蔵元は大いに活気づく。夜明け前からもろみを搾り始め、出来たての新酒を販売店の人々とともに瓶詰めしていく。出来あがったお酒は、宮司によるお祓いを受けた後、すぐに店頭に運ばれ売り出される。
これが一年に一度しか味わえない「立春朝搾り」だ。フレッシュな飲み心地と豊かな香りが特徴の縁起酒。今年で15年目を迎えるこの企画は、日本橋に本部を構える日本名門酒会の発案で始まった。
当初は一つの蔵のみ4000本の出荷だったが、今では全国38の蔵元が参加し、18万本を出荷するまでに広がりを見せている。
各蔵元に近い加盟店でのみ購入が可能。火入れをしていない清らかな風味の新酒を楽しみにしている愛好家も多い。数に限りがあるので事前に予約を。

(本部)東京都中央区日本橋馬喰町1-7-3(株)岡永内
TEL 03-3663-0330
土・日曜・祝日休(12月の土曜を除く)
※参加蔵元、取扱酒販店は公式サイトでご確認を。
www.meimonshu.jp

二十四節気とは?

現在、私たちが使っている太陽歴(新暦)は明治6年(1873年)に切り替えられたもの。それ以前は太陰太陽歴(旧暦)をもとに暮らしていました。旧暦では月の満ち欠けの周期を基準にして一年を354日と数えていたため、太陽の周期とは11日の誤差が生じます。「種まきに最適な時期はいつか」など季節を正確に知る必要がある農業従事者にとって、これは大変不便なこと。そこで暦とは別に、太陽の運行をもとにつくられた季節の目安が「二十四節気」です。天球上の太陽の通り道である「黄道」に二十四の基準点を設け、季節感あふれる名前をつけていたのです。
大寒 1月21日土曜日

大寒 1月21日土曜日 一年のうち最後の二十四節気にあたる大寒。「寒の入り」である小寒(1月5日頃)から数えて16日目にあたるこの頃は、最も寒さが厳しくなります。全国各地で最低気温が記録され、さまざまな寒稽古も執り行われます。凍り豆腐や寒天、酒や味噌など寒気を活用した食べ物の仕込み時期でもあります。

節分 2月3日金曜日

節分 2月3日金曜日「節分」は、かつて四季の分かれ目を意味する言葉でしたが、後に立春の前日だけを呼ぶようになりました。季節の変わり目には邪気が生じることから、五穀豊穣の一つであり、霊力が宿るとされる豆をまいて災厄を払い、年齢の数だけ豆を食べて無病息災を願います。そのほか、鰯の頭を柊の枝にさして軒先につるす「やいかがし」、その年の恵方に向かって食べると縁起がよいとされる「恵方巻」などの風習があります。

立春 2月4日土曜日

立春 2月4日土曜日 旧暦で一年の始まりにあたる立春。短かった日足が延び始めて気温も少しずつ上昇し、木々が芽吹き始める時期です。吹く風はまだ冷たく寒さも体にこたえますが、どことなく春の気配を感じるようになります。この日、禅寺は「立春大吉」と書いた紙札を貼ります。立春を迎えた後、初めて吹く強い南風を「春一番」と呼びます。