名建築散歩

江戸幕府のお膝元であった日本橋は、明治以降は金融期間が集中する日本経済の中心地として発展します。 大正12年(1923年)の関東大震災で多くの建造物が被災しましたが、その後の復興事業により続々と近代的なビルが建設され、昭和初期にはビジネスだけでなく、商業都市としての輝きも取り戻しました。 日本橋には今なお、そんな住時の繁栄を窺い知る見事な西洋建築が点在しています。暑さも少し和らいでくるころ、名建築をめぐる散策に出かけてみませんか?

2011年10月 【第12号】

日本銀行本店 本館

日本銀行本店 本館 日本銀行本店 本館

重鎮辰野金吾博士による石造建築 ベルギーの中央銀行をモデルに約5年半の歳月を経て完成。地上3階地下1階建ての石積みレンガ造りの本館は、銅葺きのドームを中心に美しい対称を成したネオバロック様式にルネサンス様式が加味され、中央銀行としての堂々たる風格を醸す。着工当初は欧米のような総石造りを予定していたが、明治24年(1891年)の濃尾大地震の被害状況を鑑み、建物の軽量化を図るためレンガの外側に石を積み上げる方法に変更。外装石には地階と1階に花崗岩が、2階と3階に安山岩が使用されている。

昭和49年(1974年)国の重要文化財指定
竣工年...明治29年(1896年)
設計...辰野金吾
所在地...東京都中央区日本橋本石町2-1-1
TEL 03-3277-2815(直)
www.boj.or.jp

●要事前予約にて無料の見学ツアーを実施(予約は1週間前まで)。また10月30日~11月6日には「にちぎん体験2011」を開催予定。予約、イベント内容の詳細はWEBサイトで確認を。

写真右上/中央にそびえるドームは、バロック様式の顕著な特徴。現在、このドーム内は史料展示室となっている
写真左上/1階の旧営業場内。規則正しく並ぶアーチ窓にルネサンス様式の顕著な特徴が見える
写真右下/中庭に残る、馬車が使われていた頃の馬の水飲み場。当時は正面入り口裏に厩舎があったという説も
写真左下/本館正面入り口の上部にある青銅製「咆哮の獅子像」。向かい合う獅子が、古代書体で書かれた日本の「日」の字を抱えている (1-3の写真は日本銀行出典)

日本橋三越本店 本館

日本橋三越本店 本館 日本橋三越本店 本館 日本橋三越本店 本館

日本における百貨店建築のパイオニア 日本初の百貨店は、大正3年(1914年)に鉄筋コンクリート造り地上5階地下1階建ての新館が誕生した際にも「スエズ運河以東最大の建築」と称賛を浴びた。特にエスカレーターやエレベーター、暖房換気などの最新設備や、採光天井のある壮麗な中央ホールは大きな話題を呼び、以降のデパート建築の礎となった。昭和2年(1927年)、関東大震災による修築に加え西館と東館を増築。外装も耐震性を考慮したルネサンス様式に一新し、東館の6~7階には全678席の三越ホール(現三越劇場)を開設した。

平成11年(1999年)東京都選定歴史的建造物
竣工年...大正3年(1914年)、増築 昭和2年(1927年)
設計...横河民輔
所在地...東京都中央区日本橋室町1-4-1
TEL 03-3241-3311(代)
www.mitsukoshi.co.jp

写真左上/大理石が張り詰められた現在の中央ホールは昭和10年(1935年)に改装、2階バルコニーにパイプオルガンが設置された。中央の檜材木彫の天女像は昭和35年(1960年)製作
写真右上/中央ホール採光天井のエキゾチックな装飾
写真左下/商業の神として正面入り口上で見守るイタリアのマーキュリー像。現在のものは昭和47年(1972年)製
写真右下/ステンドグラスをはじめ、絢爛な装飾に圧倒される三越劇場内

三井本館

三井本館 三井本館 三井本館 三井本館

華麗にして質実なアメリカンルネサンス 米国ピッツバーグのメロン銀行本店をモデルに、関東大震災の教訓からその2倍の地震にも耐えうるように設計、施工された地上7階地下2階建ての鉄筋コンクリート造り。「壮麗、品位、簡素」をモットーにデザインされた建物は、外壁を囲むコリント式列柱ほか内部のドリス式円柱群、その柱や床に惜しみなく使われた大理石、精緻な天井装飾など圧巻のひと言で、今なおその崇高な佇まいを残す。また竣工当時は世界初となる全館完全空調が導入されるなど、設備面においても最新鋭の技術が駆使された。

平成10年(1998年)国の重要文化財指定
竣工年...昭和4年(1929年)
設計...米国トローブリッジ・アンド・リヴィングストン事務所
所在地...東京都中央区日本橋室町2-1-1
www.mitsuifudosan.co.jp/project/special/honkan

写真右上/柱頭に華麗な装飾が施されたギリシャ古典建築様式のひとつ、コリント式柱
写真左上/地下の貸金庫から1階を望む。水銀灯のシャンデリアやエントランス上部の時計台も竣工当時のもの
写真中央/大きさ、堅牢さ、精巧さにおいて東洋最大級という中央三井信託銀行の金庫扉は昭和4年(1929年)、米国モスラー社の特注品。直径2.5m、厚さ0.55m、重さ50t
写真左下/トップライトと古典的な天井装飾。装飾モチーフの周囲には金箔が貼りめぐらされている
写真右下/1階中央三井信託銀行の営業フロア。市松模様の床、ドリス式円柱、営業カウンターに至るまで大理石が多用されている

日本橋髙島屋

日本橋髙島屋 日本橋髙島屋 日本橋髙島屋 日本橋髙島屋

古今東西の美を結集させた百貨店建築「東洋趣味を基調とする現代建築」という設計案により建造された本館は、重厚な西欧様式に垂たる木きや肘ひじ木き 、かえる股など日本的な装飾意匠が随所に。戦後以降、幾度かの増改築を経て南面にはモダンなガラスブロック壁も登場し、新旧の美しい調和は昭和建築の名作とうたわれた。外装はもちろん、創建当時から変わらない蛇腹式エレベーターなど、設備や内装にも見どころは多く、西と東、昔と今が融和したオリジナリティあふれる姿は、伝統と革新の共存を図る日本橋の象徴的な存在でもある。

平成21年(2009年)国の重要文化財指定
竣工年...昭和8年(1933年)、増築 昭和27年(1952年)~昭和40年(1965年)
設計...高橋貞太郎、村野藤吾(増築)
所在地...東京都中央区日本橋2-4-1
TEL 03-3211-4111(代)
www.takashimaya.co.jp

写真左上/戦後、増築した南側のガラスブロック壁。左奥に創建当時の本館
写真右上/正面2階窓上のかえる股、その両脇の肘木、軒下の垂木など、随所に寺院建築などで見られる和風意匠が
写真中央/米国オーチス社製のエレベーター。ホールの内壁は木目を思わせる大理石
写真左下/和洋のデザインモチーフが融合した正面口の鉄扉
写真右下/地階から1階へのアプローチ。階段天井、1階天井、さらにバルコニーと並行に連なるカーブが美しい。階段天井にある釘隠しは店内の各所で散見される

中央区立常盤小学校

中央区立常盤小学校

関東大震災後に建設された復興小学校のひとつ。校庭をコの字に囲む校舎には当時の復興小学校でよく見られたアーチ型の窓が並ぶ。

東京都選定歴史的建造物
竣工年...昭和4年(1929年)
所在地...東京都中央区日本橋本石町4-4-26

三菱倉庫ビル

三菱倉庫ビル

日本で初めてトランクルームを開設。屋上の塔屋や上階のアーチ窓、ゆるやかにカーブする外壁など客船のようなデザインが印象的。

東京都選定歴史的建造物
竣工年...昭和5年(1930年)
所在地...東京都中央区日本橋1-19-1

山二証券

山二証券

大正から昭和にかけて活躍した建築家、西村好時の設計。瓦の勾配屋根やタイル壁、丸窓の飾りなど全体的にスパニッシュ風なデザイン。

竣工年...昭和11年(1936年)※1920年代竣工との説もあり
所在地...東京都中央区日本橋兜町4-1