日本橋アートめぐり

江戸の匂いを色濃く残しながら再開発の進む日本橋は、その町並みを反映するように新旧のギャラリーが点在するアーティスティックなエリア。 普段アートに触れることのない人も、懐深い江戸っ子気質の名残が感じられる日本橋界隈のギャラリーなら、日々の暮らしに新鮮な気づきを与えてくれるアートの魅力も気軽に味わえるはず。ここでは趣向の異なる個性的なギャラリーと、一度は訪れてみたいミュージアムをご紹介します。

2011年09月 【第11号】

江戸期の骨董を中心に愛らしい掘出し物も数々

海老屋美術店

おおよそ月替わりで季節に合わせた品々が店頭に並ぶ。8月下旬から9月にかけては、ガラス器や夏の掛け軸が中心になる予定

海老屋美術店  外観 お茶目なナショナル坊やに誘われるように中へ入れば愛しいモノの宝庫。

一見気後れする店構えに思えても、お茶目なナショナル坊やに誘われるように中へ入れば愛しいモノの宝庫。ついついこれらが作られた来し方に思いを馳せてしまう

海老屋美術店元は蒔絵物や漆器、銀製品などの調度品を皇室へ納める御用商人。約340年もの長きにわたり屋号を守り続け、現在は江戸期のものを中心に錦絵や陶磁器、掛け軸、小物などの古美術品を取り扱う。九代目店主、三宅正洋さんの審美眼に適った品々は、骨董に明るくなくても眺めているうちに愛着が湧くから不思議!もちろん容易には手の出ない希少な逸品も多いけれど、中には値ごろ感のいいものも。幸運にも家に連れ帰る際には、目利きであり見立ての名人でもある三宅さんに、ぜひ使い方や飾り方のアドバイスを尋ねてみて。

東京都中央区日本橋室町3-2-18
TEL 03-3241-6543
営業時間...10:00~18:00
日曜・祝日休 ※不定休の場合あり
www.e-ebiya.com/
●年に2回、春と秋に「がらくた市」を開催。詳しくはWebサイトにて。

"作品"に生まれ変わった、和紙の魅力が味わえる

ギャラリー

明るく落ち着いた雰囲気のギャラリー。8月下旬~9月下旬は、和紙にデジタルプリントした写真展や水墨画展、書道展などが開催される予定

小津和紙 第一展示室(写真右下)では実際に使用された和紙も展示され、絵具との相性および風合いを知ることができる。人間国宝の手漉き和紙が展示されているのは、第二展示室(写真左下)

第一展示室(写真右下)では実際に使用された和紙も展示され、絵具との相性および風合いを知ることができる。人間国宝の手漉き和紙が展示されているのは、第二展示室(写真左下)

小津ギャラリー老舗和紙専門店の2階にあるギャラリー。明るく広々とした空間では、6日間単位でジャンルを問わずさまざまな展覧会が催されているが、メインとなるのは絵画や書道など和紙を用いた作品群。また、同フロアには小津和紙の350余年にわたる歴史に触れられる史料館ほか、常設の特別展示室もあり、第一展示室では東京藝術大学と共同で進める絵画用紙作りの研究成果が、第二展示室では人間国宝3氏による重要無形文化財の手漉き和紙がそれぞれ展示され、多様な和紙の質感や触感を直に味わえる。和紙の持つ無限の魅力を愉しんで。

東京都中央区日本橋本町3-6-2小津本館ビル2階
TEL 03-3662-1184
開館時間...10:00~18:00
日曜休
www.ozuwashi.net
●8月下旬~9月下旬は、6日間交代で5つの企画展を予定。詳しくはWebサイトにて。

昭和の香りを残す古民家カフェギャラリー

Cafe & Gallery KAI

8月26日(金)~9月3日(土)は「Clay Studio浅田恵美子・横尾聡展」、9月16日(金)~23日(金・祝)は「橋爪康裕作陶展」と、連続して益子焼展を開催予定

Cafe & Gallery KAI 外観 日本橋出身のアーティスト、水森亜土さんの作品。色鮮やかな作風が映える

1階のカフェの壁面に飾られているのは、ある年代以上には絵描き歌で懐かしい日本橋出身のアーティスト、水森亜土さんの作品。色鮮やかな作風が映える(写真左下)

Cafe & Gallery KAI街の中心に位置しながら喧騒を忘れさせる佇まい。昭和22年(1947年)築というこの建物は、オーナー大津博寿さんの生家という。旧東急百貨店日本橋店の美術担当を経て、同じ日本橋室町でギャラリーを経営していた大津さんが、3年前に大改装を施し、カフェ併設のギャラリーとして蘇らせた。扱うのは、陶芸を中心に布モノや彫金など。焦げ茶色の床、調度品と漆喰調の珪藻土の壁に包まれた空間は、作品がささやきかけてくるような静謐感に満ちている。 1階のカフェでは11:30~14:00までビーフカレーもしくはドライカレーのランチも。

東京都中央区日本橋室町1-13-14
TEL 03-5205-0572(ギャラリー)、
03-3274-0255(カフェ)
営業時間...11:30~18:00(ギャラリー最終日は~16:00)
土曜・日曜・祝日休※但し、ギャラリー会期中は無休
www.kai.ac

アート+クラフト+フード=風通しのいい心地良さ

馬喰町ART+EAT

8月19日(金)~9月3日(土)は、カフェメニューのコンセプトを作った林のり子さんと(食)研究工房の仕事展「林のり子の夏季学校」を開催予定

馬喰町ART+EAT 店内 廃材利用の家具は木工作家、井藤昌志さんの手によるもの(写真右下)。若いスタッフも全員画家で、「アーティストは自分の作ったものに責任を持つから」と武さん

廃材利用の家具は木工作家、井藤昌志さんの手によるもの(写真右下)。若いスタッフも全員画家で、「アーティストは自分の作ったものに責任を持つから」と武さん

馬喰町ART+EAT繊維問屋街として知られる馬喰町が、近年アートの街としても注目を集めるようになった先駆者的存在が2007年オープンのこちら。もともと編集デザインの仕事をしていたオーナーの武眞理子さんが90年代に出会ったロンドンのギャラリーをモデルに、古いビルの一室をリノベーション。テーマはずばり、暮らしの隣にある「アートとクラフトとフード」だ。勢いのある若手作家の作品を鑑賞しつつ、カフェでいただくレバノン料理も新鮮で、日常に息づくアートの愉しさや食べることの喜び、心地よさを再発見させてくれる。

東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビル202
TEL 03-6413-8049
営業時間...11:00~19:00
日曜・月曜・祝日休
www.art-eat.com
●スパイスの香り高くヘルシーなレバノン料理は、11:30~14:00ならランチセットもあり。

アートアクアリウム展~江戸・金魚の涼~

アートアクアリウム展

この夏、期間限定で開催されるアートアクアリウム展。幻想的な照明に照らされた、巨大金魚鉢や屏風水槽などのアートな水槽で泳ぐのは、多種多様な金魚たち。暑さを忘れて夢心地な涼感を味わえるほか、19時以降は会場内でドリンクが販売され、ラウンジとしても利用できる。

東京都中央区日本橋室町2-2-1コレド室町5階(エントランス4階)「日本橋三井ホール」
開催期間...開催中~2011年9月12日(月)
開館時間...11:00~23:00(木~土曜は、~25:00、最終入場は終了30分前)※11:00~19:00の昼間は「アートアクアリウム展」、19:00以降の夜間は「ナイトアクアリウムミュージアムラウンジ」
入場料...大人1,000円、子供(中学生以下)600円、3歳以下は無料
●19:00以降は貸切営業の場合あり。事前にWebサイトにて確認を。
www.h-i-d.co.jp/art

一度は訪れてみたい、日本橋の名ミュージアム

日本橋エリアには、観光名所ともなっている名ミュージアムも点在しています。
ぜひ一度、出かけてみてください。

三井記念美術館江戸時代以来300年におよぶ三井家の歴史の中で収集された美術工芸品を収蔵、展示。
東京都中央区日本橋室町2-1-1三井本館7階/TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)/開館時間...10:00~17:00(最終入館は16:30)/月曜休、祝日の場合は翌日休/入館料:一般1,000円、大学・高校 500円、中学生以下無料(特別展は一般1,200円、大学・高校生700円、中学生以下無料)※20名以上の団体割引あり※常設展なし
●展覧会:特別展「日本美術にみる『橋』ものがたり─天橋立から日本橋まで─」/開催中~9月4日(日)、特別展「華麗なる〈京蒔絵〉─三井家と象彦漆器─」/9月17日(土)~11月13日(日)
www.mitsui-museum.jp


ブリヂストン美術館印象派と20世紀絵画を中心とする西洋の近現代美術、および明治以降の日本の洋画を収蔵、展示。
東京都中央区京橋1-10-1/TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)/開館時間...10:00~18:00(最終入館は17:30)※現在、開館時間短縮中/月曜休(祝日の場合は翌日休、8月22日・29日は開館)、展示替え期間休/入館料:展覧会内容によって異なる
●企画展:特別展「没後100年青木繁展─よみがえる神話と芸術」/開催中~9月4日(日)、コレクション展示「くらべてわかる印象派誕生から20世紀美術まで」/9月14日(水)~10月18日(火)
www.bridgestone-museum.gr.jp


貨幣博物館日本銀行の分館内にあり、古今東西のさまざまな貨幣コレクションや貨幣に関する史料を展示する。
東京都中央区日本橋本石町1-3-1日本銀行分館内/TEL 03-3277-3037/開館時間...土曜・日曜の9:30~16:30(最終入館は~16:00)/夏場の電力事情等により2011年9月末まで月曜から金曜および祝日休、10月以降の開館日はWebサイトを参照のこと/入館料:無料
●企画展:「貨幣・天下統一─家康がつくったお金のしくみ─」/開催中~11月6日(日)
www.imes.boj.or.jp/cm


ジュサブロー館かつては人形の芝居小屋が並んでいたという人形町。その一角にある、人形作家かつ人形師の辻村寿三郎氏のアトリエ兼ギャラリー。
表情豊かな人形たちの魅力を間近に感じられ、ジュサブロー・ワールドを満喫できる。
東京都中央区日本橋人形町3-6-9/TEL 03-3661-0035/開館時間...10:00~17:00(最終入館は~16:30)/水曜休(祝日の場合は開館)/入館料...1,000円
www.konishi.co.jp/html/jusaburo